取引先管理の新人研修:基準は守り、改善は一緒に

新人は取引先を一方的に追い込むか、逆に取引先の言葉をそのまま信じてしまいがちです。自主基準の不合格、長雨による不作、値上げの要望、ベンダー作業と日程の遅れのクエストから、協力会社と一緒に働くための判断基準をまとめました。

First Run チーム
•約7分
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新人の取引先への接し方は、たいてい両極端のどちらかです。一方は、お金を払うのはこちらなのだから要求すればいいと考えます。もう一方は、取引先のほうが詳しいはずだからと、その言葉をそのまま信じます。前者は関係を壊し、後者は基準を失います。

協力会社、サプライヤー、生産者、ベンダー。呼び方は業種によって違っても、新人が学ぶべきことは同じです。基準は自分たちが守り、問題は一緒に解く。この記事では、First Runの生協、半導体ファブ、建設現場、IT企業のマップに出てくる取引先のクエストから、その判断基準を整理します。

基準は守り、改善は一緒に

生協の商品担当のクエスト「法律はクリア、自主基準は不合格」です。新しい取引先のカットサラダが、法的な要件は満たしているものの、生協の検査センターの細菌検査で、生協が独自に定めた自主基準を超えました。2週間後のカタログ枠はもう押さえてあり、取引先は、法的に問題ないのになぜですかと言っています。

  • 法的に問題ないので、予定どおりカタログに載せる:不十分
  • 予定どおり発売し、発売後に検査回数を増やして様子を見る:リスクあり
  • 発売を2週間延期してカタログ枠は空けたままにし、取引先には「結果が悪かったので、改善してまた持ってきてください」とだけ伝える:良好
  • 自主基準は組合員との約束だと説明し、結果を共有する。取引先と衛生・温度管理などの原因を探って改善し、再検査に合格してから載せる。今回の枠は別の商品で埋める:優秀

良好が優秀に届かない理由が、このクエストの要点です。基準は守れていますが、結果のデータや原因の候補を共有しなければ、取引先は何を直せばいいかわからず、改善が遅れます。フィードバックの学習ポイントは短く、「改善を求めるときは、データも一緒に」です。優秀のように結果を共有して一緒に改善すれば、取引先も基準に合う工場になり、長く付き合えるパートナーになります。

リスクありにも目を向けておきましょう。検査を増やすのはよいことですが、その間に基準を超えた商品が組合員さんの食卓に並びます。検査は、発売前にふるい分けるためのものです。

悪い知らせは一緒に越える

同じ生協のマップで、産直の生産者代表が訪ねてきます。この夏の長雨で、トマトがこれから3週間、計画量の6割ほどしか出せないといいます。組合員さんは、もうカタログで注文を済ませています。

  • 足りない分は市場で仕入れたトマトで補い、産直のラベルを付けて届ける:不十分
  • 混乱を避けるため、3週間分のトマトの注文をすべて取り消して返金する:リスクあり
  • あるだけ届け、足りない分は「欠品」として返金する:良好
  • 数量をすぐに共有してもらってルールどおり公平に配分し、長雨と産地の状況を、生産者の名前とともにお届け案内で正直に伝える。足りない分は返金し、ほかの産地の品にこっそり替えることはしない:優秀

1つ目は産地を偽る表示であり、産直という仕組みそのものの信頼を壊します。2つ目はすっきりして見えますが、実った6割のトマトは行き場を失い、生産者の損失はさらに大きくなります。3つ目は現実的ですが、「欠品」の二文字だけでは組合員さんに理由が伝わりません。優秀のフィードバックには、こんな一文があります。正直なお知らせは、むしろ「この生産者を応援したい」という組合員の声になって返ってくることが多い、と。よい年だけでなく悪い年も一緒に越えるのが、取引先との関係です。

価格交渉は数字を一緒に見る

生産者が、肥料と燃料の値上がりを理由に、来年の契約米の価格を15%上げてほしいと言います。生協のバイヤーは、組合員さんが受け入れられるのは5%までだと言います。もっと安い米を出すところがあると言って5%で合意するよう迫る回答は不十分です。圧力で勝ち取った5%は、生産者の離脱や品質の低下となって返ってくるかもしれません。間を取って10%で早めに合意する回答は、良好にとどまります。根拠なく間を取れば、生産費を本当にまかなえるのか、誰も確かめていないことになります。優秀は、生産費の資料を一緒に見て、値上げ幅を段階的に分けたり、包装・物流のコストを生協側で削ったりする方法を探し、値上げの理由を組合員さんに説明する回答です。

ベンダーが作業しても、手順の責任は自社に

半導体ファブの設備エンジニアのクエストでは、ベンダーがエッチング装置の部品を交換しに来ています。ライン側からは、装置はアイドルなのだから、20分かかるLOTO(エネルギーの遮断・施錠)は飛ばそうと言われます。ここで新人が選びやすい不正解が一つあります。サービスマニュアルを作ったのはベンダーなので、ベンダー自身の手順に従ってLOTOの要否を決めてもらう回答です。これは不十分です。フィードバックははっきりしています。ベンダーもこのファブの安全手順に従う必要があり、作業許可とLOTOの確認は、装置担当が責任を持って一緒に行います。

新ライン立ち上げPMのクエストでは、来週、新しい装置4台が搬入される予定なのに、施設チームからは、プロセスガスと排気の接続(フックアップ)は10日後にならないとできないと言われます。

  • 日程を守るため、ベンダーに仮のガス・排気ラインをつないでセットアップを始めてもらう:不十分
  • 施設チームはたいてい追いつくので、公式の日程はひとまずそのままにする:不十分
  • 並行できるかどうかを検討せず、すべての日程を一律に10日ずつ延ばす:リスクあり
  • 施設チーム・ベンダーとスケジュールを一本に組み直し、フックアップ不要の作業は前倒しして、影響を共有する:優秀

立ち上げPMの仕事は、部署や業者ごとにばらばらのスケジュールを一つにまとめることです。ベンダーに場当たりの手当てを任せるのも、誰もが知っている遅れをスケジュールの上でだけ知らないふりをするのも、答えではありません。

遅れはベンダーのせいで終わらせない

IT企業のマップのクエストでは、外部ベンダーが2週間遅れます。ベンダーを責めるだけの回答は不十分で、契約条件と影響を根拠に、ベンダーと社内にエスカレーションする回答が正解です。遅れの原因がベンダーにあっても、その影響を管理するのは自分たちのプロジェクトの仕事です。

建設現場にも同じ原理があります。協力会社の出来高請求が記録より多いとき、全額を保留すれば争いのない金額まで止めてしまい、協力会社の作業員の賃金が遅れるおそれがあります。確認できた分は期日内に支払い、残りは一緒に再実測する回答が正解です。このクエストは建設現場の新人研修で詳しく扱いました。

取引先管理の新人研修チェックリスト

  • 取引先を追い込む回答と、取引先の言葉をそのまま信じる回答が、どちらも不正解として入っているか
  • 基準を守りながら、結果のデータと原因を取引先と共有する回答が正解になっているか
  • 供給の問題を隠したり、別の商品にこっそり替えたりする回答が、最も悪い回答になっているか
  • 価格交渉で、根拠のない折衷がなぜ足りないのかを扱っているか
  • ベンダーが作業するときも、安全手順の責任は自社にあるという点を扱っているか
  • 業者ごとにばらばらの日程を一つにまとめるクエストがあるか
  • 遅れを契約条件と影響でエスカレーションするクエストがあるか

業種をまたいで使えるシナリオ設計の基準は業種別の新人研修シナリオ設計で、顧客や近隣住民からのクレームへの対応はクレーム・苦情対応の新人研修で続けて読めます。


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